日常の暮らしに寄り添う器「砥部焼」
1976年に国の伝統的工芸品に指定された砥部焼は、愛媛県伊予郡砥部町を中心とし、江戸時代から栄えてきました。「伊予砥(いよと)」と呼ばれる良質な砥石が採掘でき、それを利用しようとしたことから製陶が始まりました。当時、世界中で白磁器が人気を博していた背景から、砥部焼は「IYO BOWL(伊予の器)」と呼ばれ、海外にも知れ渡る逸品として発展しました。日本で近代化が進む中、製陶においても大量生産が主流となりましたが、砥部では今尚、人の手で一点ずつ器が作り続けられています。光を通すほどに際立った美しい磁肌や、呉須 (藍色の顔料) で描いた柔らかい色合いの染付け、厚みがあり丈夫な形状は、日常の暮らしに寄り添う焼き物です。
こつこつ、てしごと
作り手が思いを込めた器が、暮らしの中で愛されることを願い、砥部焼の手仕事の伝統を受け継ぐすこし屋さん。今日の自分たちよりも、すこし美しく、すこし楽しく、そしてすこし挑戦したものづくりをしていこうと日々制作に励まれています。優しく実直なお人柄を感じる器たちが魅力です。
自分たちの"かわいい"をつくり砥部焼の可能性を広げる
すこし屋さんとの出会いは、愛媛県と愛媛県産業技術研究所窯業技術センター主催の現代の砥部焼を多くの方に知っていただくために立ち上がった「RE TOBE」プロジェクトでした。プロジェクトでは、クリエイターとのコラボレーションによる新たな砥部焼を模索し、「minamoシリーズ」を開発しました。「minamoシリーズ」は縁にぽってり厚みがあり、砥部焼の伝統的なデザイン「玉縁」を想起させます。釉薬も「minamoシリーズ」用に開発し、試行錯誤の上、柔らかいグレーがかった釉薬が誕生しました。開発した商品をもってクラウドファンディングにも挑戦し、111%で目標額を達成しました。新しい砥部焼、私たちがつくる「かわいい」が受け入れられた、嬉しい瞬間でした。
自分たちの"かわいい"を追い求め、時代の変化に応じて挑戦を重ねるすこし屋さん。砥部焼の伝統を受け継ぎながらも、やさしい色柄の器たちが使う人の気持ちをほぐしてくれるように。日々土と向き合われています。