堅牢優美 日本の器
輪島は石川県能登半島に位置します。湿潤な風が吹く日本海側の気候や、材料となる木々が多く育つ地理的条件は、漆器を制作する環境に適しており、縄文時代前期より漆器づくりが始まりました。輪島塗独自の技法が確立したのは、江戸時代初期と言われています。能登地方で発見された硬度の高い珪藻土(地の粉)を漆に混ぜ、下地に用いたことで、漆器では類を見ない強固な器が誕生しました。加えて、蒔絵や沈金といった見た目の美しさや、漆特有の優しい肌触りから、輪島塗は「堅牢優美(けんろうゆうび)」と称されるようになりました。
北陸の名匠がつくる作品たち
日本最大の総合美術展覧会、日展で2011年、2014年と2度の特選受賞歴がある北陸の名匠、蒔絵師の山元健司さん。山元清巧堂の店内には漆器とともに山元さんの作品がずらりと並びます。特選を受賞した「ナチュラル」や「スローモーション」は、螺鈿と金、銀などの研ぎ出し技法を駆使してつくられており、それぞれの要素が美しく絡み合う様が圧巻です。
左)2011年 日展特選受賞作品『スローモーション』
右)2014年 日展特選受賞作品『ナチュラル』
器を大切に育てる そして次の世代へ
山元清巧堂の暖簾には「おばあちゃんが買うた器を孫が継ぐなんて素敵やわいね。」と記されています。使うほどに味が出る輪島塗は世代を超えて受け継がれ、修繕しながらも大切に育てていきたい器です。
2024年、能登半島地震により輪島市は大きな被害に遭い、多くの輪島塗の工房が被害を受けました。山元清巧堂さんのお店は損壊こそ免れたものの営業が難しくなり、現在はオンラインショップのみ営業されている状況です。
私たち日吉屋がつくる京和傘も、輪島塗と同じく分業制から成る工芸品です。分業制は、どの工程の職人が欠けてしまっても、伝統を継承することはできません。同じ職人として、輪島塗の伝統を途絶えさせないためにも、微力ながらお客様に商品を届けるお手伝いをさせて頂きたいと思います。